事八日

二十四節気では「大雪」の頃──、
南天の実が赤く色づき、冬枯れの山に彩りを添えます。

大雪とは、雪が本格的に降り出す頃のこと。
野山の生き物たちは、厳しい寒さに備えて冬ごもりの支度を始めます。

十二月八日と二月八日が対となり行われる
伝統行事「事八日(ことようか)」。
新しい物事を始める、または納める重要な節目とされ、
各地にさまざまな風習が根づいています。

事八日の“事”は、祭事や神事を意味し、
コトノカミという神を祀る日。
農事を終える十二月八日を「事納め(ことおさめ)」、
田植えの準備が始まる二月八日を「事始め(ことはじめ)」と呼び、
田の神様に感謝を捧げて五穀豊穣を祈ります。
地域によってはこの日を、歳神様を迎える正月儀礼と捉え、
正月準備を始める十二月八日を事始め、
正月行事が終わる二月八日を事納めと呼ぶ場合もあります。

古くから事八日は、物忌みの日と考えられ、
その戒めの厳しさから、神や悪霊の到来を恐れる伝承が生まれました。
関東では、この日の晩に“一つ目の妖怪”が現れるとされ、
目籠やざるを長い竿の先にかけ、家の軒に高く掲げておくことで、
無数の目を恐れて逃げ出すと信じられたそうです。
また、厄除けや無病息災を祈って、
里芋、大根、人参、牛蒡、蒟蒻、小豆の六種の食材を入れた
「お事汁」と呼ばれる味噌汁を作り、
家族で食して養生をする風習もあります。

事八日は、針仕事を忌み慎むべき日とも言われ、
その年に折れた針や古針を豆腐や蒟蒻などのやわらかいものに刺し、
針の労をねぎらって供養する「針供養」が行われます。
かつては社寺に納めるほか、土に埋めるか川や海に流すことで、
裁縫の上達を祈る意味合いもあったそうです。

身近にいる人や物への感謝を捧げる事八日──。
日本の慎ましやかな心が表されている大切な慣わしです。