夏の果

二十四節気では「立秋」を迎える頃──、
芙蓉の花が青空を彩り、ヒグラシの声が響き始めます。

立秋は、新しい四季の始まりとなる“四立(しりゅう)”のひとつ。
この日から十一月初頭に訪れる「立冬」までが、
暦の上での秋とされています。

初秋といえども暑さ厳しい八月は、
まさに夏から秋へと移ろうあわいの時季。
空高く流れる雲や、夕暮れどきに吹き渡る涼風に、
少しずつ秋の気配が漂うようになります。

炎暑のうちに訪れる立秋。
詩歌の世界において「秋」は春と並ぶ重要な季節であり、
俳人たちは自然の機微に心を寄せ、
この時季ならではの風情を好んで詠みました。
風や雨、陽射し、植物の芽吹きや葉色の移り変わりなど、
さまざまな兆しを見つけ、その趣を託した言葉が、
現代においても「季語」として息づいています。

夏の終わりを表す「夏の果(なつのはて)」。
炎暑もようやく終わりを告げるという安堵の気持ちとともに、
過ぎゆく夏を惜しむ情感溢れる季語です。
夏祭りや花火など愉しみの多い季節であることから、
思い出に耽りながら行く夏を見送る、
そんな寂寥感も込められています。
これに並ぶ季語には「秋近し」や「秋隣」などがありますが、
時季は同じでも意味合いは大きく異なり、
待ちわびた秋がすぐそこに来ているという
喜びの思いが込められているのだとか。
また、近づく秋を表すのは「桐一葉(きりひとは)」。
桐はほかの木々よりも早く落葉が始まるため、
桐の葉の最初の一枚がはらりと落ちる様を見て、
秋の訪れを知るという趣深い言葉です。

夏と秋が行き合う八月──、
移ろいゆく自然を慈しみ、来たる秋へと思いを馳せて。